昨日は大学生活最後の授業だった。
単位は本当にギリギリで危ない状況だけれど、真面目に学校へなんか行けやしなかった。尾崎も聴いていた。
けれど、随分前からぺ'コータさん(以下ペコさん)とは『最後の授業は絶対ばっちり出よな。最後やし』と固い誓いをしていた気もするが、
そんな誓いは僕は遥かベネズエラ共和国の彼方に忘れてしまっていた。
木曜の時間割は1、2、5限という殺人的に暇な時間ができてしまうスケジュールになっている。
もちろん、僕は1限から授業へ出席するはずだったが、9時に起きて風がごうごう鳴り響いているのを見て、
『無理』というたった二文字の判断を下し、即二度寝に向かった。
二度目に起きたのは11時半。同じ授業を取っている大ちゃんからの電話だった。
『りょうた、今家?』
『うん』
どうやら大ちゃんも寝坊したらしい。ペコさんもまだ寝ていたことを聞かされる。
変な連帯感、安心感から僕は電話を切った後、三度目の眠りにつく。
ピリリとまた携帯が鳴る。
『やまがっさ〜ん、やまがっさ〜ん』
このきしょい声はペコさんからの電話だ。
『ふぁ〜ぃ、すいませ〜ん』
電話の向こうでのテンションの高いペコさんの姿が容易に想像された。彼は僕を『やまがっさん』と呼んだことはないからだ。
なるほど、今日は最後の授業だったか。僕はそこでようやく事の重大さを思い出した。
1限にはもう間に合わないけれどまだ5限がある。
それに今まで1限の授業には真面目に通った試しがない。
最後だけ頑張るというのは虫のいい話。
だから5限だけは出よう、そして学校で飯を食おうということになり、5限の授業よりも幾分早く学校へ向かった。
学校へ向かう車の中でペコさんは何度も『今日が最後の授業やな。』と呟いた。
僕は『朝青龍と白鵬どっちが優勝するかなぁ』と考えていた。
学校へ着くと、キャンパスが凄まじい冷気を帯びた風にさらされていた。
施工主の気の迷いにより、我が大学のキャンパスは山の上に建てられているために風がどうしようもなく強い。
『帰りたい…』
口には出さなかったがそう思った。
授業までの時間は飯を食ったり、暇人してた斉藤さんとタバコ吸ったり、なんだかんだしてた。
そしていよいよ5限の授業が始まる。
4限終わりの斉藤さんはペコさんを連れて帰りたがっていて、僕はもしかして帰るんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたけど、ペコさんは執拗な誘いを頑なに拒んだ。
ペコさんの最後の授業に対する鬼気迫る熱い闘志のようなものを感じた。
5限の授業は先生がレポートの事に関してうんたらちんたらあれやこれや言うという大変大事な授業だったため最初から真剣に聞いていた。
出席表に名前と学籍番号を書くために僕は大ちゃんにペンを借りた。
ふと前の席のペコさんを見ると何とペンを装備している。
いつもは僕と同じく授業手ブラ族なのに…。
なんてやつだ。恐れ入った。神かこいつは。
しかもそのペコさんの装備しているペンはただのペンではなく耐水性だ。
もう何と言うか限りなく油性に近いのである。
もはや書き間違いすら起こさないという意志の表れだ。
こやつはいい先生になるぞ。ペコソンセンニン!!
授業での大事な話は終わったので大ちゃんとペコさんと3人で途中でタバコを吸いに行った。
いつもはここで大ちゃんに出席表を渡し、帰るケースが多い。
タバコを吸った後、留学から帰り勤勉家へとイリュージョンチェンジを果たした大ちゃんはそそくさと教室へと戻る。
教室の外に取り残される僕とペコさん。
『帰ろうよ』
僕の声が冷たく暗い教室前の通路に響き渡る。
『最後やし、自分の手で出席だそうや』
『帰ろうよ。(早く帰らないと相撲が終わってしまう)』
『最後やしな、頑張ろうや、なっ!りょーた。』
負けたよ、お前には。お前の気迫には負けたよ。完敗だ。君の意志に乾杯!!
授業が終わり、自分の手で最後の授業の出席表を一番前の机に出しに行く。
震える右手で出席表を机の上に置く。
なんと誇らしげな気分だろう。
どうだ、俺は今自分の手で出席表を出しているぞ、みんな見ているか、見なさい!そしてあわよくば褒めてくれ。俺は今、自分の手で出席表を出しているぞ。出しているんだぞぉーうぉー!
と叫びたくなるような誇らしさ。
代返もいいが、やはり自分で出す出席表は重みが違う。
俺頑張ってるかもという気持ちになる。
コメントとか書いちゃおうかなというどん欲な気持ちになる。
ついでにメガネもかけるかという気持ちになる。
しかしすべては錯覚。
出席表は自分の手で出すのが当たり前なんだ実は。
世の中って不思議。
今まで代返してくれたひとありがとう。
そして、僕がもし卒業出来なかったら、きっとそれは誰のせいでもなく代返してくれなかったひとのせいだ。
せやろがい!!
Choose Attendance paper!!
単位は本当にギリギリで危ない状況だけれど、真面目に学校へなんか行けやしなかった。尾崎も聴いていた。
けれど、随分前からぺ'コータさん(以下ペコさん)とは『最後の授業は絶対ばっちり出よな。最後やし』と固い誓いをしていた気もするが、
そんな誓いは僕は遥かベネズエラ共和国の彼方に忘れてしまっていた。
木曜の時間割は1、2、5限という殺人的に暇な時間ができてしまうスケジュールになっている。
もちろん、僕は1限から授業へ出席するはずだったが、9時に起きて風がごうごう鳴り響いているのを見て、
『無理』というたった二文字の判断を下し、即二度寝に向かった。
二度目に起きたのは11時半。同じ授業を取っている大ちゃんからの電話だった。
『りょうた、今家?』
『うん』
どうやら大ちゃんも寝坊したらしい。ペコさんもまだ寝ていたことを聞かされる。
変な連帯感、安心感から僕は電話を切った後、三度目の眠りにつく。
ピリリとまた携帯が鳴る。
『やまがっさ〜ん、やまがっさ〜ん』
このきしょい声はペコさんからの電話だ。
『ふぁ〜ぃ、すいませ〜ん』
電話の向こうでのテンションの高いペコさんの姿が容易に想像された。彼は僕を『やまがっさん』と呼んだことはないからだ。
なるほど、今日は最後の授業だったか。僕はそこでようやく事の重大さを思い出した。
1限にはもう間に合わないけれどまだ5限がある。
それに今まで1限の授業には真面目に通った試しがない。
最後だけ頑張るというのは虫のいい話。
だから5限だけは出よう、そして学校で飯を食おうということになり、5限の授業よりも幾分早く学校へ向かった。
学校へ向かう車の中でペコさんは何度も『今日が最後の授業やな。』と呟いた。
僕は『朝青龍と白鵬どっちが優勝するかなぁ』と考えていた。
学校へ着くと、キャンパスが凄まじい冷気を帯びた風にさらされていた。
施工主の気の迷いにより、我が大学のキャンパスは山の上に建てられているために風がどうしようもなく強い。
『帰りたい…』
口には出さなかったがそう思った。
授業までの時間は飯を食ったり、暇人してた斉藤さんとタバコ吸ったり、なんだかんだしてた。
そしていよいよ5限の授業が始まる。
4限終わりの斉藤さんはペコさんを連れて帰りたがっていて、僕はもしかして帰るんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたけど、ペコさんは執拗な誘いを頑なに拒んだ。
ペコさんの最後の授業に対する鬼気迫る熱い闘志のようなものを感じた。
5限の授業は先生がレポートの事に関してうんたらちんたらあれやこれや言うという大変大事な授業だったため最初から真剣に聞いていた。
出席表に名前と学籍番号を書くために僕は大ちゃんにペンを借りた。
ふと前の席のペコさんを見ると何とペンを装備している。
いつもは僕と同じく授業手ブラ族なのに…。
なんてやつだ。恐れ入った。神かこいつは。
しかもそのペコさんの装備しているペンはただのペンではなく耐水性だ。
もう何と言うか限りなく油性に近いのである。
もはや書き間違いすら起こさないという意志の表れだ。
こやつはいい先生になるぞ。ペコソンセンニン!!
授業での大事な話は終わったので大ちゃんとペコさんと3人で途中でタバコを吸いに行った。
いつもはここで大ちゃんに出席表を渡し、帰るケースが多い。
タバコを吸った後、留学から帰り勤勉家へとイリュージョンチェンジを果たした大ちゃんはそそくさと教室へと戻る。
教室の外に取り残される僕とペコさん。
『帰ろうよ』
僕の声が冷たく暗い教室前の通路に響き渡る。
『最後やし、自分の手で出席だそうや』
『帰ろうよ。(早く帰らないと相撲が終わってしまう)』
『最後やしな、頑張ろうや、なっ!りょーた。』
負けたよ、お前には。お前の気迫には負けたよ。完敗だ。君の意志に乾杯!!
授業が終わり、自分の手で最後の授業の出席表を一番前の机に出しに行く。
震える右手で出席表を机の上に置く。
なんと誇らしげな気分だろう。
どうだ、俺は今自分の手で出席表を出しているぞ、みんな見ているか、見なさい!そしてあわよくば褒めてくれ。俺は今、自分の手で出席表を出しているぞ。出しているんだぞぉーうぉー!
と叫びたくなるような誇らしさ。
代返もいいが、やはり自分で出す出席表は重みが違う。
俺頑張ってるかもという気持ちになる。
コメントとか書いちゃおうかなというどん欲な気持ちになる。
ついでにメガネもかけるかという気持ちになる。
しかしすべては錯覚。
出席表は自分の手で出すのが当たり前なんだ実は。
世の中って不思議。
今まで代返してくれたひとありがとう。
そして、僕がもし卒業出来なかったら、きっとそれは誰のせいでもなく代返してくれなかったひとのせいだ。
せやろがい!!
Choose Attendance paper!!
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by ryouya04
| 2008-01-25 07:52